投資先を選択しよう
さあ、それでは投資先を決めましょう。
投資先選びの結論を最初にお話しします。購入すべき商品は、コストの低い「バランス型投資信託」です。この商品を毎月の収入から天引きした資金ですこしずつ積み立てていくのです。
「モーニングスター」という金融商品の情報サイトがあります。そこで、商品の検索が出来るので、手数料の安いバランス型投信信託を検索します。そこで出てきた商品の中で1商品選択します。たったこれだけです。
しかし、「そんなに簡単でいいの?本当にこの商品で大丈夫なの?その商品を選んだ根拠が聞きたい」と言われる方もおられるでしょう。
この質問の答えは、積立投資の目的と戦略を知れば理解できます。
皆さんの積立投資の目的は、手間をかけずに自分の味方になる資産を増やし、日々感じているストレスや不安から逃れることです。
だから資産を増やそうとして、時間をかけて研究し、商品を頻繁に売り買いをするようなやり方をしてはいけません。ストレスを更に増やすばかりです。
手間をかけず、投資をしていることを忘れているうちに、資産を増えるような方法がいいのです。
これを実現するための戦略は3つです。①時間と投資先を分散すること。②手数料などのコストの安い商品に少しずつ投資すること。③複利の力を使って資産を大きくしていくことです。
つまり、積立投資により毎月の収入から一定の金額を天引きし、その資金を投資先が分散されていてコストの安い、かつ複利の力がはたらくバランス型投資信託に少しずつ投資する事が最適なのです。
ここで、「分散」、「コスト」、「複利」と3つの専門用語が出てきました。この専門用語は積立投資の戦略を理解する上で避けて通れないものです。
これらをひとつずつ説明していきます。
1 分散
まずは「分散」です。分散には2種類あります。
ひとつは投資する資産の種類を分散すること。ふたつ目は投資するタイミング、時間を分散することです。
「分散」する理由は、投資する資産の価値が日々上下するからです。
この上下する振れ幅のことをリスクといいます。この上下する振れ幅が大きいと、購入するタイミングによっては大きくもうかる場合もあれば、大きく損をしてしまうこともあるのです。
だから、株式などリスクの高い商品は大きく損をするというイメージがありますね。
しかし、それを回避する方法があります。
株式のようにひとつの商品だけでなく、他の商品、例えば債券、REIT(不動産投資信託)、また同じ株式にしても、先進国に投資する商品か、新興国に投資する商品か、など地域の違う商品と組み合わせて購入することです。
これが「資産の分散」です。
資産の分散で、購入した資産全体の価値の上下の振れ幅は小さくなります。
なぜなら、各商品の価格の上下するタイミングや大きさが異なるからです。振れ幅が小さくなるので、収益の大きさは小さくなります。それでも、現在の預貯金のような少ない利息ではなく、一定の収益は見込めるのです。
バランス型投資信託は、ひとつの商品に株式、債券、REIT(不動産投資信託)などが組み合わされていて、ひとつの商品で既に資産の分散がなされているのです。
そこで更に時間の分散を組み合わせます。
「ドルコスト平均法」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
商品をまとめて一度に購入するのではなく、購入時期を分けてすこしずつ購入します。
そうすることで価格の高いときに購入する分と低い時に購入する分がならされて一定の購入価格に落ち着きます。
ドルコスト平均法を使えば、価格が高いときにまとめて購入して大きな損をすることを回避して、利益をあげることができるのです。
しかしドルコスト平均法は短い期間では効果は現れません。
1年のような短期では、価格の大きな波の一方向しか捉えられないからです。やはり10年程度をスパンに考えないといけません。
その意味でも、積み立て投資の方法は時間分散にもってこいの方法です。少しずつ時間を分散して資産を積み立てていきましょう。
2 コスト
コストは、あまり語られませんが一番重要な項目です。
コストとは、株式や投資信託など金融商品を購入する際に証券会社などが取る手数料、税金等のことです。
ここまで聞かれて皆さんは疑問をもたれると思います。「これまでも株式とか投資信託とか購入してきたけど、簡単には利益は出なかった。」
その答えがコストです。
投資は資産の価格が下落して、損をしてしまうから危険とよく言われます。
しかしそれは大きなことが抜け落ちています。高い手数料などをいつの間にか沢山差し引かれているから少しの価格の下落で損をしてしまうのです。そのくらい手数料の力は大きいのです。
証券会社や金融機関がとる手数料などは、必ず取られます。株や投資信託が下落して投資金額を下回ってしまったとしてもです。税金も利益が出れば取られます。
手数料が高いと仮に利益が出ていたとしても、すぐに投資した金額を下回ってしまうのです。
すぐに損をしてしまう原因の大半には、コストが関係しています。
更にコストは販売する金融機関、証券会社によって巧妙に隠されます。そうでないと売れないからです。
金融機関、証券会社は投資商品を販売する際に損をするリスクを説明しなければいけません。その際、商品の価格が下落して損をするリスクについては一番に説明しますが、そこにコストが大きく関わっていることを十分に説明しません。
損をした時に、原因が商品の価格が下落したからなのか、コストが高すぎるからなのかは計算しないと分かりません。
だから、我々は投資先を検討する時にコストを確認する必要があるのです。
購入する商品に手数料がどのくらいかかるかを確認し、手数料が低い商品を優先するのです。
株式であれば証券会社の取引手数料を確認します。ネット証券会社であれば、手数料は安くなります。
投資信託もネット証券会社を利用すれば、販売手数料を安くすることができます。
しかし、投資信託はそれ以外にも手数料がかかります。投資信託は投資信託の運営会社がお金を運用し、それを投資した我々に還元するものなので、運営会社が運用する際の手数料もかかります。これが信託報酬というものです。
商品を選ぶ際に各種手数料がどのくらいかかるのかを確認できます。先に紹介したモーニングスターというサイトで、商品を選ぶ際にコストが安いものを抽出できます。特に安いものだけを選択肢としましょう。
コストをしっかり確認して商品を選択しましょう。
3 複利
「複利」とは、簡単に言えば、お金がお金を生んで大きくなる仕組みのことです。
投資というものは、お金で株式などを購入することで、更なるお金を増やすことを目的としています。
そのお金を生み出すサイクルを早く、大きくしていく仕組みが複利です。
株式や投資信託に配当金、分配金というものがあります。株式であれば会社の業績、投資信託でいえば運用の成績、これらがよかった場合に我々に追加で還元されるお金です。
その配当金や分配金を受け取った時、もらったままにするのはもったいないです。
その資金を更に投資に回せば、資産を増やすための援軍になります。そしてまた配当金、分配金が出れば更に援軍が増えるのです。
このように配当金、分配金を援軍として使う方法が複利です。
ちなみに受け取った配当金、分配金を援軍として使わずにそのままにしておき、もとの投資額だけでお金を増やしていくことを単利といいます。
複利を使えば、加速度的にお金が増えていきます。
ちなみに投資した資金を倍にする時間が、単利より複利の方が5年も早いと言われています。(100万円、年利回り5%で運用した場合)
だからお金を効率的に増やしたいのであれば、複利を使いましょう。
配当金、分配金はどんどん投資金額に組み込むのです。
具体的には、投資信託であれば分配金を自動的に再投資するものを選びます。
株式であれば、配当金を口座に貯めておいて時期を見て再度株式を購入します。
こうすることで、複利を最大限利用してお金を効率的に増やすことが出来るのです。
■まとめ
今回は投資商品を選択する方法についてお話してきました。
投資商品選びの根拠は、積立投資を行う目的にあるともお話しました。
一番の目的は自己にある不安を解消し、快適に生活することです。
だから、商品選びに躍起になり、商品選びや商品の売買自体が目的になってはいけないのです。
商品を販売する側は、そうなることを狙っています。だから常に商品の値動きを示し、不安を煽り、新たな商品を販売していきます。
それに私たちは乗ってはいけないのです。
投資について意識せず、日々淡々と生活しながら資産を積み上げて行く方法が一番なのです。
それを実現する方法が積立投資です。是非実践して資産を増やし、自己にある不安を払拭してください。